フロントフォークのサビは要注意!?フォークの錆取り方法を解説
フロントフォークに錆が目立ってきて、サビの取り方や落とし方について、調べていませんか?
「インナーチューブについた赤茶色のサビを、落とす方法を知りたい」
「アルミ製アウターチューブが白く濁ってきたので、サビの落とし方や磨き方を知りたい」
「インナーチューブの再メッキが高いので、応急処置の方法を知りたい」
こういった疑問は、ありませんか?
この記事では、インナーチューブだけでなく、アウターチューブも含めて、フロントフォークの錆取り方法を、解説していきます。
この記事を読んでもらえると、フロントフォークの錆取りを自分で実践できて、フロントフォークの見た目や機能を、少しでも復元できるようになります。
目次
1.【バイク】フロントフォークのパーツ別にみるサビの種類と影響
フロントフォークの具体的な錆取り方法を解説する前に、パーツ別にサビの種類について、触れていこうと思います。
そもそもサビ(錆)は、金属が酸素や水と反応して、腐食する現象のことをいいます。
赤茶色の鉄サビが、一般的にイメージできる「サビ」ではないでしょうか。
このサビですが、鉄以外の金属でも、サビは発生します。
フロントフォークのパーツの中では、サビが発生し、サビ取りが必要となる主なパーツは、インナーチューブとアルミ製のアウターチューブです
インナーチューブは、アウターチューブ内を上下に動き、フロントフォークにサスペンションの機能をもたらすための、重要な構成パーツです。
1-1.オイル漏れや故障の原因?インナーチューブのサビ
多くのインナーチューブは、クロムメッキが施されていて、メッキ特有のギラギラとした外観を持っています。
インナーチューブで見られるサビの進行
点錆→赤錆
比較的サビに対して強いクロムメッキですが、錆びてくると、点錆から赤錆の順番で、腐食が進んでいきます。
点錆
点錆は、1mmくらいの斑点のようなサビで、クロムメッキに空いている微小なスキマから、発生するサビと言われています。
ほとんどのクロムメッキは、下地との間にニッケルメッキが入っています。
そのためこのサビは、ニッケルメッキとクロムメッキの異種金属が接していることに由来する可能性が考えられます。
この点錆が発生すると、表面が凸凹してくるので、触るとざらつきを感じてきます。
赤錆
赤錆は、クロムメッキ上では、点錆が進行した時におこるサビで、赤茶色した見た目をしています。
鉄のサビと考えられ、間に入っているニッケルメッキ層が腐食し、下地の鉄まで届くことで、発生していると考えられます。
赤錆は、目立つので、メッキされたフロントフォークの見た目が、さらに悪くなります。
また、表面の凹凸はより増してきます。
インナーチューブのサビが原因でおこる不具合
インナーチューブは、ブレーキやカーブで力が加わると、ストローク(沈み込み)をして、力が弱まると戻ってきて、アウターチューブ内を上下に動きます。
インナーチューブは、フォークオイルを内部に「とどめておく」オイルシールと触れていて、触れている部分を摺動部(しゅうどうぶ)と呼んでいます。
もしインナーチューブの摺動部に大きいサビがあると、ストロークしたときにオイルシールを傷めてしまい、フロントフォークのオイル漏れの原因となります。
フロントフォークにオイル漏れがおこると、オーバーホールと呼ばれる修理が、必要になってきます。
このオーバーホールですが、バイクショップに依頼すると3.2万円~と、比較的高額な修理になっています。
フロントフォークのオーバーホール費用については、「フロントフォークのオーバーホール費用とは?」の記事で解説しています。
ぜひ参考にしてください。
1-2.曇ったような見た目のアルミ製のアウターチューブのサビ(白サビ)
黒をはじめ色々なカラーで、塗装されていることも多いアウターチューブですが、中には、「アルミ素地をそのまま活かしたアウターチューブ」もあります。
このアルミ製のアウターチューブで、よく見られるサビが、アルミのサビである白錆です。
アルミのサビも他のサビと同じように、空気や水があると進行していきます。
この白サビが発生すると、鏡面のようなギラギラした外観が、徐々にくもっていき、最後には完全に白っぽくなってしまいます。
このように白錆が発生すると、外観を損ねるので、キレイにしておきたいですよね。
2.一般的な錆取りの方法
サビは主に金属の酸化物なので、一般的に錆び取りは、下の二つの方法がメインです。
代表的な錆取りの方法
- 研磨
- サビ取り剤(酸性の薬品)
研磨は、物理的にサビをけずって取り除き、サビ取り剤は、薬品を使用してサビをとかして、取り除いていきます。
下の表に、それぞれの方法の特徴をまとめてみました。
研磨 | サビとり剤 | |
---|---|---|
方法 | サビを削る | サビを溶かす |
サビの深さのコントロール | 比較的容易 | 難しい |
作業時間 | 研磨作業 | マスキング+浸透+洗浄 |
向いているサビの量 | 小~中 | 中~大 |
マスキングの必要性 | なし | あり |
ただし、フロントフォークの錆取りでは、研磨での錆取りが唯一の方法です。
なぜならば、サビ取り剤を使用すると、インナーチューブのメッキを腐食します。
また、アウターチューブは研磨の工程が必ず入るので、工程からも研磨が一般的です。
つづいて、それぞれの特徴について説明していきます。
2-1.研磨による錆取り方法
サビ落としの代表的な方法が、研磨によるサビ落としです。
一般的にサビを取り除く研磨では、サビをけずって物理的に取り除いていきます。
研磨によるサビ落としのメリット
- 局所的なサビを落とせる
- けずる量を調整できる
例えば、研磨した場所のみのサビを除去できるので、局所的なサビにも簡単に対応できます。
そして、サンドペーパーや研磨剤の粒子の大きさに規格があるので、けずる量を調整できる点もメリットです。
例えば、細かいサビであれば#1000番などの高い番手で、広範囲で深くまで進行しているサビには#150などの粗い目を使用するなど、研磨であれば調整ができます。
一方で、この研磨によるサビ落としのデメリットとしては、サビの面積が広がれば、その分の時間と労力が増えることです。
2-2.酸性の薬品を使用した錆取り方法
サビに対しては、酸性の「サビとり剤」も、有効なサビ落としの方法です。
多くのサビは、酸性の薬液に溶け出す性質があります。
そのため、サビついたパーツを浸しておくだけで、サビが取れます。
一方で、酸性の薬品は、サビを溶かすだけでなく、鉄やクロムメッキなどの金属も溶かしてしまう性質があります。
そのため、クロムメッキが施されているインナーチューブを、酸性の薬液でサビ取りをすると、メッキ層が薄くなったり、剥がれてしまうので、避けましょう。
3.【バイク】フロントフォーク-インナーチューブの錆取りと補修方法
上で述べてきたように、インナーチューブとアルミ製のアウターチューブのサビでは、その材質が異なっています。
そのため、錆取りの方法や補修方法がパーツ別に変わるため、ここではパーツ別に解説していきます。
まず、インナーチューブの錆取りは、研磨でサビを物理的に削っていく方法となります。
クロムメッキが施されているインナーチューブのサビ取りには、下にあげるような注意が必要です。
⚠︎インナーチューブの錆取りでの注意点
- サンドペーパーや研磨剤は、柔らかい素材や小さい粒子のものを選ぶ
- 寸法が変わらないように、丁寧に磨く
例えば、硬い粒子が練り込まれたサンドペーパーや、硬い研磨剤は、サビだけでなく、クロムメッキもけずってしまいます。
もし、メッキにキズが入ったり、メッキの膜厚が薄くなると、よりサビやすくなってしまいます。
したがって、柔らかい素材のものや、削る量が抑えられる細かい粒子のものを、選びましょう。
また、インナーチューブは、チューブの外径(寸法)が、規格化されています。
もし、けずりすぎて寸法が変わると、フロントフォークの不具合の原因になります。
そのため、寸法にほとんど影響がない程度に、丁寧にみがいていきましょう。
3-1-1.インナーチューブ摺動部の錆取り方法と補修方法
インナーチューブの摺動部に点錆や赤錆で、ザラツキや凹凸を感じたら、下の手順で錆取りを行います。
錆取りの手順
手順
- インナーチューブの取り外し
- スチールたわしでのサビ落とし
- 研磨剤でのインナーチューブ磨き
- 無溶剤シリコンスプレーでの防錆
用意するもの
- フロントフォークを分解するための工具一式
- スチールたわし
- コンパウンド(サンドペーパー、ペーパーホルダー)
- 無溶剤シリコンスプレー
おすすめのサビ取り用品
材料・工具 | スチールたわし | コンパウンド | シリコンスプレー(無溶剤) |
---|---|---|---|
製品名 | ボンスターロールパッド36P | ピカール 金属みがき | CRC シリコンスプレー |
メーカー | ボンスター | 日本磨料工業 | 呉工業 |
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①インナーチューブの取り外し
摺動部まで点錆や赤錆が広がっているようでしたら、インナーチューブを取り外してから、錆取りをするのがおすすめです。
取り外さずにやると、ダストシールから内側のサビを、見落としてしまうからです。
取り外した後も、組み立てが必要で、サービスマニュアルや必要な工具の用意、そして経験が求められます。
そのため、無理にインナーチューブを取り出す必要は、ありません。
取り外さずに行う場合は、見えている部分だけでもしっかりとサビ落としと、磨きをおこなっていきます。
②スチールたわしでのサビ落とし
赤錆だけでなく点錆にも、スチールたわしからサビ落としを始めるのが、おすすめです。
スチールたわしは、繊維は粗いものの、柔らかい素材でできているので、クロムメッキを削る恐れが少なく、メッキパーツの錆落としに向いています
全体をこすりながら、目立った赤錆や点錆を取り除いていきましょう。
③研磨剤でのインナーチューブ磨き
スチールたわしでサビがある程度きれいになったら、研磨剤(コンパウンド)や大きな番手のサンドペーパーで、インナーチューブを磨きます。
これはスチールたわしでのサビ落としだけでは、表面の凹凸が残り、オイルシールなどを傷つけてしまう恐れが、あるからです。
クロムメッキのメッキ層をなるべく残すためにも、粒子径が小さい研磨剤や、大きい番手のサンドペーパーを使用してます。
磨いていく時は、一方向だけに磨くと研磨痕が残って、オイルシールを傷つける要因になります。
色々な方向から磨いて、研磨痕を残さないようにしましょう。
④インナーチューブの保護
既にサビが発生してしまったインナーチューブは、新品や再生品と比べると、錆びやすい状態になっています。
これは、サビを発生させる異物が残っていたり、クラック(穴)がより広がってしまっている、などの原因が考えられます。
そのため、可能であれば保護剤で、錆止めをしていきましょう。
ただ、インナーチューブの摺動部は、フロントフォークのオイルやオイルシールなどのパーツに、触れる部分であるので、保護剤には制限があります。
インナーチューブの錆止め剤としては、無溶剤系のシリコンスプレーが知られています。
組み立てた後の摺動部にかけて、インナーチューブをサビから守りましょう。
また、シリコンスプレーも時間とともに剥がれてしまうので、定期的に振りかけておくと良いでしょう。
3-1-2.摺動部以外の錆落としと補修方法
摺動部以外であれば、研磨剤の選択や保護剤の選択を、広げても問題ありません。
例えば、インナーチューブを磨くのに細かい粒子の研磨剤を使用すると、時間や労力がかかってきます。
もし、メッキの膜厚や傷をあまり気にしないようだったら、サンドペーパーの番手を下げて、効率をあげても問題ないです。
また、保護剤にはメッキ調塗料や亜鉛メッキスプレーなどを使用しても、動作に影響はないので、使用しても問題ありません。
3-2.インナーチューブの錆取りで間に合わない時
もし、ご紹介したサビ取り方法が合わないこともあると思います。
サビを綺麗に取っても、フロントフォークからオイルが漏れたり、思ったような仕上がりにならなければ、下のことを考えると良いでしょう。
インナーチューブのサビ取りで、間に合わない時の対処法
- 純正品への交換
- 社外品への交換
- インナーチューブの再メッキ
純正品への交換
純正品であれば、見た目もキレイで、取り付け時の不具合もないので、安心して使えます。
ただ純正品は、社外品と比べて高額であったり、場合によっては、生産が終了していることもあるので、注意しましょう。
社外品への交換
社外品は、純正品と比べて安価なものが多いので、予算次第では選択肢になります。
ただし、社外品は純正品とは異なり、品質に問題があるものもあり、取り付け不具合やメッキの品質にも、注意が必要です。
バイクショップの店員さんや、購入サイトの口コミを参考にして、購入すると良いでしょう。
インナーチューブの再メッキ
再メッキも選択肢の一つです。
再メッキは、使用していたインナーチューブを再生する方法です。
新品と同じような工程で仕上げ、元々使用していたパーツを使うので、取り付けの不具合は、ほとんどおきません
ただ、新品と比べて高額になることもあるので、新品が製造中止などで、手に入らない時などに考えると良いでしょう。
インナーチューブの再メッキの工程や費用などについては、「フロントフォークのインナーチューブの再メッキとは?」で詳しく解説しています。
もし、インナーチューブの再メッキに興味がありましたら、ぜひ参考にしてください。
4.【バイク】フロントフォーク-アルミ製アウターチューブの錆取り方法(バフ研磨)
アウターチューブの中には、アルミ製のパーツがあります。
アルミ製のパーツは、放置しておくと、だんだんと白くくすんでいきませんか?
これは、アルミ特有の白錆による影響です。
新品のようにアルミの輝きを復元する方法を、こちらで紹介していきます。
錆取りの手順
手順
- サビ、キズの除去
- 下地磨き
- 仕上げ研磨
- クリア塗装
用意するもの
- サンドペーパー
- ペーパーホルダー
- コンパウンド
おすすめのサビ取り用品
材料・工具 | サンドペーパー | ペーパーホルダー | コンパウンド |
---|---|---|---|
製品名 | 紙やすり 15種類セット | サンドペーパーホルダー TKG-1072810 | ピカール 金属みがき |
メーカー | 日本磨料工業 | ||
価格(送料) | 480円(無料) | 972円(無料) | 395円(+送料) |
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1.サビ、キズの除去
まずは、アウターチューブについたサビやキズを、けずり取ります。
アウターチューブは、バイク全面にあるので、飛石やブレーキダストなどで、キズもつきやすい部分ですね。
ここでは、そのキズやサビを大まかに取り除くため、#120あたりの粗めの番手のサンドペーパーを使って、けずっていきましょう。
また、アウターチューブには、サビ防止や保護のため、クリア塗装がされているもののあるので、一緒に削り取ります。
2.下地磨き
サビの除去ができたら、アルミの下地を磨いていきます。
ここでもサンドペーパーや、電動の研磨工具(サンダー)を使用して、磨きます。
例えば、#320→#600→#1000と番手を上げながら、前の番手でついた研磨痕を消すように、磨き上げていきます。
また、一方向のみから磨くと、表面にうねりや局所的な面ができてきてしまうので、あらゆる方向から磨いていくのが、良いでしょう。
3.仕上げ研磨
下地磨きが終わったら、より高い番手のサンドペーパーやコンパウンドを使って、綺麗に磨いていきます。
仕上げる度合いは、使うコンパウンドやサンドペーパーの粒子サイズで主に決まってくるので、鏡面まで仕上げたい場合は、より粒子サイズの小さいものを選びましょう。
4.クリア塗装
仕上げ研磨が終わったら、クリア塗装などの保護剤を塗布しておくと、サビからまもれます。
アルミ素地は、削ると表面にそれ以上腐食しない、「不動態膜(ふどうたいまく)」を作ります。
ただ、この膜は薄く、飛石などでキズが入ると、露わになったアルミから、サビます。
クリア塗装や保護剤を塗布する場合は、塗むらや液ダレを防ぐため、薄く何度も塗ることがおすすめです。
4-2.アウターチューブのサビ取り・研磨に手間を感じたら
サビ取りをしてしっかりキレイに磨いた後に、すぐにくすんできてしまったら、やるせなさを感じてしまいませんか?
アルミは、非常に柔らかい素材でキズつきやすいので、そこからサビが広がり、サビやすい材質でもあります。
もし、このメンテナンスに大変さを感じたら、下にあげるような二つの対処方法を考えてみてはどうでしょうか。
アウターチューブのメンテナンスへの対処方法
- 塗装
- メッキ加工
塗装
例えば、塗装をすると、クリア塗装の膜の他に、プラサフ、カラー塗装の膜が加わってきます。
複数の膜が重なることで、より厚みがまし、サビにも強く、メンテナンスの頻度を減らすことができます。
メッキ加工
また、アルミ製のアウターチューブをメッキ加工するのも、メンテナンスの頻度を減らせる方法です。
メッキ加工では、表面にアルミよりも硬い金属であるクロムでメッキをします。
この硬いクロムメッキは、アルミと比べるとキズが入りにくく、アルミをサビから守ってくれる効果が期待できます。
メッキ加工の料金や工程などは「メッキ加工における料金とは?」の記事で解説しています。
もし、興味があれば読んでみて下さい。
まとめ
フロントフォークのサビ取りは、素材が異なるので、パーツ毎に変わってきます。
インナーチューブの錆取りは、柔らかい素材や粒子の細かい研磨剤を使って、表面の凸凹を滑らかにするように、丁寧に磨いていきましょう。
アウターチューブの錆取りは、粗い粒子のサンドペーパーから初め、コンパウンドで納得いくまで磨きます。
ぜひこの記事で紹介した方法を試してみて、お持ちのバイクをキレイに復元してください。
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