リアローダウン後のフロントフォーク突き出し調整で変わる性能を解説
足つきの改善を目的として、リアサスペンションの変更やアンコ抜きなどでリア側のローダウンをした後は、フロント側での調整も考えていると思います。
でも、フロント側の突き出しでのローダウン調整においてどの性能に着目すべきか悩んではいませんか?
フロント側のローダウンでかわる性能や機能は限られているため、ポイントを抑えておくとスムーズに調整が行えます!
この記事では、フロントフォークの突き出し調整で変化する性能や機能を解説していきますので、最後まで読んで頂き、是非フロント側の調整・チューニングを行う際の参考にして下さい。
また、突き出しに限らず、フロントフォークのプリロードやスプリング(バネ)変更など、フロントフォークのローダウン一般でも共通する内容なので、他の方法でフロント側のローダウンを行う際にも是非参考にしてください。
→フロントフォークの突き出し調整をした後は、サスペンションの調整も検討してみませんか?
サスペンション調整の方法やそれらの効果を「フロントフォークのサスペンション調整の方法とは?方法別に効果を解説」で記事にしました。
興味がありましたら、是非読んでみて下さい。
目次
1.リアとフロントのローダウンで変わる性能のまとめ
まず初めに、フロントフォークの突き出し調整で解消するポイントやより悪化する性能や機能を分かりやすくまとめてみました。
リアローダウンのみ | フロントローダウンで調整 | |
---|---|---|
乗車姿勢 | ↓ 反り返る | ↑ 解消する |
前後荷重変化 | ↓ リア側へ | ↑ 解消する |
実舵角 | ↓ 減る | ↑ 解消する |
直進安定性 | ↑ 増す | ↓ 戻る |
ローリングの運動性 | ↑ 向上する | ↑ 向上する |
ローリングの安定性 | ↓ 損なう | ↓ 損なう |
リアローダウンでの変化する性能・機能
リア側をローダウンすると、直進安定性やローリングの運動性は向上してくるものの、乗車姿勢、実舵角、そしてローリングの安定性が悪化し、荷重にも変化が起こります。
これは、重心が後方だけでなく、下へ向かうことにも起因しています。
フロント側の突き出し・ローダウンで変わる性能・機能
一方で、フロントフォークをローダウンすると、ライディング姿勢、前後荷重変化、実舵角は解消するものの、改善していた直進安定性は元に戻ってしまいます。
そして、ローリングの安定性はより一層損なわれます。
つまり、フロントフォークのローダウンの調整では、乗車姿勢をはじめいくつかの点はデフォルトの性能に戻る方向に向かいますが、ローリングの安定性だけは、より悪化してしまう結果となるのです。
これは、リア側のローダウンでかたよった後方への重心移動が、フロント側のローダウンで、もとにもどる方向に向かいますが、した方向の重心移動にかんしては、フロント側での調整でさらに下に重心が移動するため、より影響が大きくなるのが要因です。
ローダウン調整用の記録をつけよう
突き出し調整を実際に行う上で、用意したいのが、突き出し量と変わった性能や感想を記録しておくためのノートです。
安全性を確保するためにも、突き出し量を1mm単位で微調整しつつ、ここに挙げた乗車姿勢や実舵角の変化、そして直進安定性など変わった性能などの感想をそのノートに記録します。
このノートがあれば、もし突き出しを元に戻したり、更に調整する時に見直しするのに役立ちます。
ローダウン調整での注意点
また、フロント側のローダウンでより悪化するローリングの安定性は、旋回時の倒れ込む距離の余白(マージン)で、これが損なわれるとカーブでの転倒事故や大幅に膨らむことに繋がります。
ローダウンした後のテスト走行では、特にカーブに入る前の侵入速度や体の傾きやに気をつけましょう。
加えて、ここに挙げている性能の変化はメインにはなりますが、記載しきれていないものもあります。
市販のバイクは、絶妙なバランスの上で設計・製造されており、十分な安全性が担保されています。
そのバランスを崩すローダウン化は危険性を伴うので、ご自身でチューニングする際は、調整工程やテスト走行で違和感や不具合がないか慎重に確認しましょう。
2.突き出し調整での解消点
まずは、先ほどの表でリア側のローダウンで悪化した性能や機能の中で、フロントフォークの突き出し調整で、解消する性能や機能(乗車姿勢・前後荷重変化・実舵角)を説明して行きたいと思います。
これらの機能は、リアのローダウンで後ろに偏ったポジションがフロント側に戻ってくることに由来する機能となります。
2-1.乗車(ライディング)姿勢
フロントフォークの突き出し調整で改善するポイントの一つが、乗車(ライディング)姿勢です。
テスト走行で確認したいポイント
- 前傾姿勢の度合い
- 上体の角度
- ハンドルの高さなど
乗車姿勢は、ハンドルやシートあるいはステップなどのパーツの位置や形状で決まってきます。
そして、その乗車姿勢によって体への負担、そして走行パフォーマンスが変わってきます。
そのため、乗車姿勢を決めるパーツは、車種やバイクタイプ別に適切な位置で取り付けられています。
リア側のローダウンでは、足つきを改善するためにシートの高さを下げます。
そして、ライディング姿勢はデフォルトの状態よりも腰が下がり、上体がやや反り返った姿勢になるため、元々の乗車姿勢から崩れてしまいます。
一方、フロントフォークのローダウンをすると、ハンドルは下がり、続いて上体も下がってくるので、ローダウン前の乗車姿勢に近づけることができます。
フロント側のローダウンでライディング姿勢を元に近づけて、走行パフォーマンスや腰をはじめ体への負担も以前と変わらないよう調整すると良いでしょう。
2-2.前後荷重変化
続いて、リアのローダウンで後ろに移った荷重が、フロントフォークのローダウンを行うことにより、解消されます。
テスト走行で確認したいポイント
- 前輪の軽さが戻っているか
- ハンドルの重さが戻っているかなど
荷重とは物体に作用している力のことになりますが、バイク用語においては荷重移動やフロント荷重などをよく耳にしますね。
例えば、内側に体重をかけることを内側への荷重移動と言ったりします。
カーブを曲がる際、ハンドル操作だけでなく内側に荷重移動(ローリング)をすると内側への力(内向力)が強まり、カーブがより曲がりやすくなります。
逆にカーブを曲がり切り直進に戻す際は、カーブの外側に体重をかける荷重移動を行うと、立ち上がりがよりスムーズになります。
荷重は、左右だけでなくフロント(前輪)やリア(後輪)にも、発進の時やブレーキの時に関わってくるので、大切なポイントです。
リア(後方)荷重
発進時は、前に進もうとする力(加速力)に反発する力がリア側にかかるため、リア荷重が発生します。
そのリア荷重は、より強くなるとフロントタイヤ(前輪)が浮きあがり、場合によってはウィリーの格好になってしまい危険です。
リア側だけのローダウンではバイク全体の重心位置が下側だけでなく後方にも移ります。
従って、よりリア側への荷重が増えるため、発進時に前輪が浮き上がってくる危険性が高まります。
フロントでの荷重調整
逆に、フロント側をローダウン調整すると後方に偏った荷重が前方に戻ってくるので、発進時も前輪が路面にしっかりと接地し、前輪が浮き上がる現象を抑制することができます。
従って、フロントフォークの突き出しでは、荷重が前方に戻ってくる分、ハンドルの重さや発進時の前輪の浮き上がりで調整すると良くなります。
2-3.実舵角
続いて、フロントフォークのローダウン化では悪化した実舵角を解消する働きもあります。
テスト走行で確認したいポイント
- 実舵角(ハンドルを切る角度と実際に曲がれる角度)が復元されているか
リア側でのローダウンは、カーブを曲がる際によりハンドルを切ったり、荷重移動のため体をより傾ける必要が出てきます。
これは、ステアリングヘッドが後方下に向かうためで、キャスター角の広がりと実舵角の低下に起因します。(キャスター角と実舵角の関係はこちら)
一方、突き出しでのフロントフォーク側での調整では、ステアリングヘッドを前方に戻すため、キャスター角が狭まり実舵角も解消に向かいます。
この実舵角の解消は、ハンドルを切った角度と前輪が曲がっていく角度に連動するので、リア(後方)をローダウンする前と同程度まで復元されているか確認しましょう。
3.突き出し調整で戻るポイント
続いては、リア側のローダウンで改善した性能や機能の中で、フロントフォークの突き出し調整で、戻ってきてしまう性能を解説して行きたいと思います。
この性能も、リアのローダウンで偏ったポジションをフロント側に戻すことで調整される性能です。
3-1.直進安定性
トレール量が増えることによる直進安定性は、リア側のローダウンで改善されますが、フロント側のローダウンで解消される方向に働きます。(トレール量と直進安定性の関係はこちら)
テスト走行で確認したいポイント
- 直進でのハンドルの安定性
トレール量は、ステアリングヘッドの位置で変わり、ステアリングヘッドをより後方下におしもどすリア側のローダウンで、トレール量はより大きくなります。
逆に、フロントフォークの突き出しにより、ステアリングヘッドが立つので、トレール量が小さくなります。その結果、改善した直進安定性は元に戻ります。
4.ローダウン化で増幅する改善点と改悪点
前方から後方にいったリア側でのローダウンをフロント側で調整することで、解消する点を見てきました。一方で、フロントフォークのローダウンでは、前方下に荷重を調整するため、前後の荷重調整だけでなく、より下側に荷重が移動します。これによるメリットや弊害もあるので、ここで見ていきましょう。
4-1.ローリングの運動性
まずは、ローリングの運動性がより向上します。
テスト走行で確認したいポイント
- カーブ時に体を傾け、安定するまでの時間と距離
バイク姿勢は、方向別に「ピッチ」「ロール」「ヨー」とされていて、カーブでバイクを左右に倒す動きが「ロール」で、その動きのことをローリングと呼んでいます。
つまり進行方向に対して、左右に体を傾ける動きがローリングですね。
このローリングをする際、重心の位置が低いと移動半径がより短くなるので、より素早く体を傾けられるようになります。
この傾く運動のことを、「ローリングの運動性」と呼んでいるので、フロントフォークのローダウンでさらにローリングの運動性は向上していくことになります。
4-2.ローリングの安定性
ローリングの運動性が向上する一方で、ローリングの安定性はより失われるようになってきます。
テスト走行で確認したいポイント
- カーブ時に体を傾け、安定した位置での余白
ここでのローリングの安定性は、体を傾けた際の距離の余白(マージン)のことを示しています。
体を左右に傾けるローリングでバンク角をつけることで、カーブを曲がる際に発生する遠心力と内向力の釣り合わせを行います。
ただ、そのバンク角が広がり過ぎると転倒の恐れが出てきて、逆に浅いと膨れてカーブしてしまいます。
ただし、サスペンションなどが働くことで、バンク角にはマージンがあります。
重心が低いことによる影響
しかしながら、重心が低いと移動半径が小さい分、同じ移動距離での角度の変わり方が、重心が高い位置よりも大きくなります。
つまり、重心が低い位置にある方が、ローリングの距離のマージンが狭いと言えます。
このマージンの狭さは、安定性にも繋がります。
なぜならば、バンク角のマージンから外れると転倒や大回りになる恐れがあるです。
従って、重心がより低くなるフロントフォークの突き出しでは、ローリングの安定性がより損なわれる結果になります。
⚠︎注意
ローダウン後は、カーブや車線変更など旋回時のスピードをおさえましょう。
5.旋回及び直進安定性に及ぼす影響
ここでは、ローダウンで影響を受けるキャスター角や実舵角、そしてトレール量と直進安定性の関係について、より詳しく解説していきます。
5-1.キャスター角と実舵角
キャスター角と実舵角は、キャスター角が広く(大きく)なれば実舵角が減り、逆にキャスター角が狭まれば(小さくなれば)実舵角が増加する関係があります。
キャスター角は、ステアリングヘッドの回転中心軸とタイヤ(車輪)の垂直軸のことです。
一般的に、アメリカンタイプはステアリングヘッドが路面に近く寝ているためキャスター角は広く、逆に、スポーツタイプはステアリングヘッドが垂直方向に立っていてキャスター角が狭い傾向にあります。
他方実舵角は、走行中のバイク(車両)のタイヤ(車輪)中心面とバイク前後軸とのなす角度で定義づけられています。
簡単に言うと、ハンドルを切った際に実際につくフロントタイヤの角度のことです。
混合しやすい用語に「操舵角」がありますが、これはハンドルを切ることでつくステアリング軸の角度です。
この実舵角を理解するには、旋回時に内側方向へ体を倒す傾き(バンク角)を想像するとイメージしやすくなると思います。
カーブの際、同じくらいにハンドルを切っているにも関わらず、より体やバイクを内側に傾けた方がより小さい円(角度)でカーブを曲がることができますね。
従って、バンク角をより広くすると、実舵角もより大きなる関係にあります。
では、キャスター角と実舵角はどのように関連してくるか見ていきたいと思います。
ステアリングヘッドは車輪の垂直軸に対してある角度を持っていますが、極端な例としてキャスター角の角度が0°の時と角度が90°の時の実舵角で仮定してみると、想像しやすくなります。
キャスター角0°
実舵角が0°の場合、ステアリングヘッドは車輪(タイヤ)の垂直軸と平行になります。
例えば、操舵角つまり進行方向に対してある角度をつけてハンドルを切ったとします。
すると、タイヤもハンドルを切った角度の方向に進みます。これは、タイヤの垂直面と路面が交わっているためです。
従ってキャスター角が0°の場合は、実舵角は操舵角がそのまま反映されます。
キャスター角90°
次にキャスター角が90°の場合、つまりステアリングヘッドと路面が並行な場合を考えてみたいと思います。
この時もキャスター角が0°と同じようにハンドルを切って、操舵角に同じように角度をつけるとします。
すると路面に接しているタイヤの底の部分は動かずに、タイヤ上部のみ右左に動くことが理解できると思います。
そのため、ハンドルをいくら切ってもタイヤは曲がらずに、まっすぐ進んでしまいます。
言い換えると、操舵角をいくらつけても実舵角には反映されません。
従って、キャスター角が90°の場合は、車体を旋回させることはできず実舵角はゼロになります。
以上のことから、キャスター角と実舵角の関係は、キャスター角が広がれば実舵角が減る傾向にあります。
そのため、フロントフォークによる突き出しは、キャスター角を狭める方向に行くので、低下した実舵角が解消されることに繋がります。
一方で、市販されているバイクのキャスター角が20度~30度の範囲で収っていて、キャスター角を変えた場合の実舵角の変化は限定的とも言われています。
5-2.トレール幅と直進安定性
続いて、トレール幅と直進安定性の関係について説明します。
トレール幅は大きくなると、直進安定性が増します。逆に、トレール幅が小さくなると、直進安定性が減る関係にあります。
トレール幅は、ステアリングヘッドの回転中心軸の延長線と路面が交わる点と、タイヤの接地点の中心までの長さで定義付けられています。
一方で、直進安定性とは左右に振れることなくまっすぐに進もうとする強さと言われています。
大きいトレール幅は、よりタイヤが路面に接している距離・長さが長いことを意味しています。
そのため、トレール量が大きいと、タイヤと路面が接している距離が長い分、タイヤが左右に振れたり向いたりする抵抗も大きくなります。その結果、直進安定性が高まります。
逆にこのトレール幅が小さいと、路面とタイヤが左右に振れる抵抗が少なくなり、直進安定性が悪くなります。
また、リア側のローダウンをするとキャスター角が広がるとともに、トレール幅も増えます。
トレール幅が増えるリア側のローダウンでは、直進安定性が増すことになります。
6.ローダウン後のサスペンション調整
ローダウンを行った後に確認したのが、サスペンションの調整です。
サスペンションは、路面の凹凸からの衝撃を和らげる緩衝装置としての機能や安定走行のための路面追従性の機能、そして車両を支える機能を持っているパーツです。
またサスペンションは、バネ(スプリング)とダンパー(ショックアブソーバー)で構成されていて、バネの長さや強さ、そしてダンパー内部の仕組みやオイルの粘性などで、その機能がコントロールされています。
前方のサスペンションであるフロントフォークだけでなく、リア側のサスペンションもその位置を変えると、停車時だけでなく走行時のサスペンションに対する負荷が変わってくため、機能にも影響を及ぼします。
もし、サスペンションの動きが悪かったり良すぎたりして、乗り心地に違和感を感じたり、底付きや路面追従性が悪いように感じたら、サスペンションの調整を行うと良いでしょう。
→フロントフォークのサスペンション調整の方法については、「フロントフォークのサスペンション調整」の記事で解説しています。是非こちらもご覧ください。
7.構造変更申請
ローダウンを行った後に気をつけたいのが、構造変更申請です。
この構造変更申請は、車体の高さが4cm以上変わった時に必要になるので、ローダウンで4cm以上車体が低くなったら、申請を行いましょう。
車体の高さは、多くのバイクではハンドルの位置が一番高い位置にあるので、その高さが基準になります。
構造変更申請書は、管轄の運輸支局あるいは自動車検査登録事務所で行います。
また、対象は250cc以上のバイクで、検査にかかる費用は検査手数料400円と審査手数料1.600円になります。
もしご自身での不安がある場合は、バイク屋さんに依頼することもできるので、相談するのも良いでしょう。
まとめ
以上、リア側でのローダウンに行うフロントフォークの突き出し調整で変わってくる性能について解説してきました。
フロントフォークの突き出し調整では、ライディング姿勢や前輪の浮き、実舵角の変化、そして直進安定性などを細かくチェックしながら、進めると良いでしょう。
フロント側を調整することで、多くの性能はデフォルトのように戻りますが、ローリングの安定性はより悪化してしまいます。
ローダウンした後のテスト走行では、特に侵入速度や体の傾きやに気をつけて、安全性を確保しましょう。
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