フロントフォークのサスペンション調整の方法とは?方法別に効果を解説

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フロントフォークの動きに違和感や不満を感じていたり、バイクショップからの指摘でサスペンション調整を考えていても、その方法や効果については知っていますか?

この記事では、プリロードからバネ調整までサスペンション調整を方法ごとに得られる効果や失う効果、そして検討するべき場面などを解説して行きます。ご自身でサスペンション調整をする人だけでなく、バイクショップに依頼する人も、調整方法やどの機能が向上するか分かるようになるので、サスペンション調整への理解がより深まります。

サスペンション調整を考えている人は是非最後までお読み下さい。

1.フロントフォークのサスペンション調整まとめ

フロントフォークのサスペンション調整の主な方法は、「プリロード調整」「減衰力調整」「バネ調整」の3点です。
下の表では、それぞれの調整方法ごとの主な効果ややり方そしてその費用についてまとめました。

調整方法効果やり方
プリロードフロントの高さ調整
底つき
アジャスター調整
イニシャルアダプターの取付
減衰力伸縮の速度調整アジャスター調整
オイル粘度の調整
バネ(スプリング)硬さ・反力の調整オイル面の高さ調整
スプリング交換

例えば、プリロードには、主にフロントの高さを調整できたり、底つきの改善に効果があります。そして、減衰力は、フロントフォークの伸び縮みの速さに影響を与えるので、硬さで違いを実感できます。
まずはこの表を見て、方法とそのやり方について大まかなイメージを持ってみて下さい。

全ての調整を行う場合、アジャスターが付属している車種での一般的な調整手順は、性能への大きさ順に、バネ調整、プリロード調整、その次に圧側(テンション)と伸び側(コンプレッション)の減衰力調整となります。

もし、底つきの改善など一つの効果を得たい場合であれば、パーツの購入費用や取付費用と予算を考慮して、試してみましょう。

サスペンションを調整する際には、ノートやメモ帳を用意することをお勧めします。そしてこのノートには、調整するポイントとテスト走行での効果を書き留めておくと、無駄なく調整できて、後からでも見直せるのでおすすめです。

2.プリロード調整

フロントフォークのサスペンション調整の一つがプリロード調整です。

プリロードは、内部のバネに予め負荷をかけるセッティングのことを言います。
ここでは、プリロード調整による機能・性能の変化、そして調整方法について説明していきたいと思います。

2-1.プリロードの効果

プリロードで変化する機能をまとめてみていきたいと思います。

下の表ではプリロードをかけた場合と抜いた場合の効果や影響をまとめました。

変化する機能プリロードをかけるプリロードをぬくフロント車高との関連
フロントの高さ高くなる低くなる-
乗車姿勢(前傾)浅くなる深くなる
荷重後輪荷重前輪荷重
実舵角弱まる高まる
直進安定性向上する低下する
重心高くなる低くなる
ローリングの運動性低下する向上する
ローリングの安定性向上する低下する
底つき改善する悪化する✖️

プリロードをかけるとフロント側が高くなり、その結果ライディング姿勢や重心位置に変化が起こります。 そして、フロント側が高くなることは、直進安定性やローリング安定性の改善とローリング運動性の低下などに繋がります。

また、プリロードをかけると、底つきが改善されるのもの効果の一つです。もし体重が軽すぎる場合は、フロント側の沈み込みも標準よりも浅くなっているので、プリロードを抜く方向で調整すると良いでしょう。

フロントが高くなる理由

ではなぜプリロードを行うとフロント側が高くなるのでしょうか。

例えば、プリロードをかけていない状態で体重50Kgのライダーが乗車するとフロントフォークは、ライダーがハンドルに掛ける荷重分だけ沈み込み、フロントフォークは縮みます

一方で、体重50Kgのライダーがかける荷重分だけプリロードでバネにかけると、その荷重分だけ内部のバネは縮みますが、フロントフォークのボトムからトップまでの全長は変わりません。そして体重50Kgのライダーが乗車しても、既にプリロードで荷重がかけられているので、フロントフォークの沈み込みは起こらず、フロントフォークは高さに変化はありません。

つまり、プリロードをかけておくことで、沈み込みが抑制され、プリロードをかけていない時と比べてフロント側が高くなってくるのです。

フロントが高くなることの効果と影響

プリロードをかけてフロント側が高くなると、乗車姿勢や直進安定性、旋回時の運動性や安定性などに影響を与えます。 逆に、既にプリロードがかかっている状態からプリロードを抜くとフロント側が下がり、フロントが高くなることに付随した性能や影響は反対の方向に向かいます。

一方で、フロントフォークの調整方法には、サスペンションの調整とは別に突き出しがあります。 突き出しは、フロントフォークをハンドルから突き出させるセッティングです。 この突き出し調整は、プリロードと同じようにフロント側の車高を高くしたり、低くできます

➡︎そして、その影響も同じようなものになっています。フロント側が高くなることによるの乗車姿勢、実舵角、直進安定性、ローリングの運動性への影響については、「リアローダウン後のフロントフォーク突き出し調整で変わる性能を解説」で詳しく解説しているので、詳細を知りたい方は是非読んでください。

プリロードによる底つきの改善

一方で、突き出し調整にはない効果として、プリロードは底つき対策として有効です。
底つきとはサスペンションが限界まで縮んだ状態のことで、この底つきが起こると路面からの突き上げをダイレクトに感じます。

このサスペンションが限界まで縮む底つきは、フロント側に想定以上の負荷がかかった時に発生します。 仮に底つきが起こる荷重を「底つき荷重」とし、プリロードでかけた荷重を「プリロード荷重」とします。 プリロードをかけておけば、実際に底つきするのは、底つき荷重+プリロード荷重となり、プリロード荷重分だけ余力が生まれます。 従って、プリロードはかけた荷重分だけ余力が生まれので、底つき防止になります。

2-2.プリロードのやり方

では、プリロードはどのようにして行えば良いのでしょうか。

スポーツタイプなど、プリロードアジャスターがついている場合であれば、オーナーズマニュアルなどを参考にして、マイナスドライバーやレンチなどの工具を使用して調整します。

もし、プリロードアジャスターがついていないバイクでも、プリロードを行うためのイニシャルアダプターが市販されているので、購入して取り付けましょう。 取付は、付属のマニュアルを参考にして自分で行うかかバイクショップに持ち込んで依頼しましょう。

3.減衰力調整

減衰力とは、いわゆるバネ(スプリング)の振動を抑えるためのダンパーの力のことです。

フロントフォークは、内部のバネとダンパーユニットで構成されています。
バネに力をかけて、あるポジションに収めようとする時、バネは伸び縮みの振動をしながら、そのポジションに収束していきます。これに減衰力が強いダンパーを適用すると、ほとんど振動せずに力がつり合った適切なポジションに収束します。ただ、その伸びる速度や縮む速度は遅くなります。

弱い減衰力
減衰力が弱いダンパーの場合、バネの振動をあまり抑えられず伸びたり縮んだりを繰り返して、最終的なポジションに収まります。ただ減衰力が高い場合と比べると伸びたり縮んだりする速度は早くなります。

走行中の場面を考えると、減衰力が弱いフロントフォークでは、段差に対し素早く縮んで行きますが、揺れは収まりづらく、柔らかさを感じます。逆に減衰力が強いと、フロントフォークはゆっくりと縮んでいくので、硬さを感じますが、ストロークした後に上下の揺れはほとんど感じなくなります。

そして、この減衰力は、オイルの性質とダンパーの構造に影響を受けています。 オイルやダンパーを変更することで減衰力を強めたり弱めたりだきます。そして、バイクの中には、フロントフォークの縮む方(圧側・コンプレッション)だけあるいは伸ばす方(伸び側・テンション)だけの減衰力を調整できるアジャスターが付属している車種があります。このアダプター付きの車種は、どちらか一方を繊細に調整できるのが特徴です。

ここでは、まず減衰力の強弱での調整での効果とそのやり方およびテンション・コンプレッション調整の効果とやり方を解説していきます。

3-1-1.強弱での減衰力調整の効果

まず、減衰力の高さで走行時にどのような影響が出てくるのか、高い場合と低い場合を比較してみたいと思います。

変化する機能・効果高い減衰力低い減衰力
フォークの柔らかさ硬くなる柔らかくなる
制振作用高まる弱まる
サスペンションの動き落ち着く暴れる
荷重移動しにくくなるしやすくなる
ピッチング利用しにくい利用しやすい

減衰力が高くなると伸び縮みする速度がゆっくりするので、制振作用が高まったり、サスペンションが落ち着く効果があります。 逆に、減衰力が低いとフロントフォークは柔らかくストロークしやすくなり、フロントやリアへの荷重移動がしやすくなったり、ピッチングを積極的に使えるなどの効果があります。

3-1-2.やり方-オイル交換

減衰力の強弱による調整は、粘性の異なるオイルに交換することで行います。フォークオイルの粘度が高いと減衰力が強く、粘度が低いと減衰力は弱くなります。

フロントフォークのオイル変更は、バイクショップに依頼するかDIYする場合はサービスマニュアルを参照すると良いでしょう。

→フロントフォークのオイル交換費用について気になる方は、「フロントフォークのオイル交換費用は?お店とDIYの費用を解説」の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみて下さい。

3-2-1.圧側・伸び側調整の効果

テンション調整は、フロントフォークが伸びる時の減衰力調整になります。 一方で、コンプレッションセッティングは、縮む際の減衰力調整になります。

減衰力伸び側(テンション)調整の効果
変化する機能・効果かけるぬく
制振作用高まる低下する
サスペンションの動き落ち着く暴れる
リア側への荷重移動しにくいしやすい
フロント荷重の残しやすさ残しやすい残しにくい

例えば、伸び側に減衰力を掛けて強めると、伸びた状態を維持しやすくなります。 その結果、制振作用が高まったり、サスペンションが落ち着くなどの効果があります。

減衰力伸び側(コンプレッション)調整の効果
変化する機能・効果かけるぬく
フォークの硬さ硬くなる柔らかくなる
ブレーキでの沈み込み緩やかになる激しくなる
フロント側への荷重移動しにくいしやすい
リヤ荷重の残しやすさ残しやすい残しにくい

圧側の減衰力を高めるとフロントフォークが硬くなり、ノーズダイブの抑制にも効果があります。また、フロント側へ荷重は移動させにくいものの、リア荷重を残しやすくなる効果もあります。

3-2-2.圧側・伸び側調整のやり方

テンションとコンプレッション調整は、オーナーズマニュアルに記載の方法かバイクショップに依頼すると良いでしょう。 また、DIYで行う場合は、マイナスドライバーなどの工具が必要になる場合もあります。

4.バネ調整

サスペンション調整の3番目はバネ・スプリングの反力調整です。

フロントフォークは、内部のバネだけでなく、ダンパーユニット内部のフォークオイルで満たされていなスペースにある空気もバネとして利用し、フロントフォークを縮めたり伸ばしたりする反力を得ています。 ここでは、空気のバネを「エアスプリング調整」としバネ自体の調整は交換して調整するので、「スプリング調整」としてそれぞれ説明して行きます。

4-1-1.エアスプリング調整の効果

エアスプリングの強さがどのような効果を与えるか説明していきたいと思います。

高いエア反力低いエア反力
オイル面高くする低くする
フォークの硬さ硬くなる柔らかくなる
ストローク量小さくなる大きくなる
底つき改善する悪化する

エアスプリングは、ダンパー内部の空気量で決まり、オイル面を上げて空気量を減らすと、同じストローク量に対する反力は強くなります。 同じように空気量が少なければ、小さいストロークでも、反力・押し戻す力が強くなるため、ボトム付近で硬く感じるのと、底つきの抑制にも効果があります。

逆に、オイル面を下げて空気量を増やすと、よりストロークが必要になり底つきの可能性が高くなってきます。 もし、底つきの問題があるようでしたら、オイル面を上げて空気量を減らすと良いでしょう。

4-1-2.エアスプリングの調整方法(オイル面調整)

エアスプリングの調整はフォークオイルの高さで調整します。 この調整にはフロントフォークの取り外しが必要になってくるので、オイル交換と同じようにサービスマニュアルの用意やバイクショップに依頼しましょう。 もしDIYでする場合は、フロントフォークの左右の高さも揃える必要があるため、フォークオイル調整ツールや計量カップを利用することをおすすめします。

4-2-1.スプリング調整の効果

内部のスプリングを調整するには、別のスプリングへの交換となります。

スプリングを交換すると、フロントフォークの硬さを調整できたり、底つきを抑制できます。
これは、エアスプリングと同じように反力に影響があるためで、高いバネレートのスプリングは、硬く反発力が強いので、フロントフォークが硬くなるとともに底つきの抑制に繋がります。

一方で、バネレートだけでなくスプリングを交換する際に知っておきたいのが、その構造です。

スプリングの種類には、等ピッチスプリングと不等ピッチスプリングがあり、不等ピッチスプリングにも「二段不等(ツーステッププログレッシブ)スプリング」と「多段不等(コンスタントライジングレート)スプリング」があります。

等ピッチスプリング
等ピッチスプリングは「リニアレートスプリング」とも呼ばれ、スプリングのピッチ(隙間の間隔)全てが等間隔であるスプリングです。

  • パネレートが一定
  • 硬さを調整するのが困難

このスプリングでは、バネレートが一定なので、ストロークの深さで柔らかさや硬さをコントールするのが難しい側面を持っています。

二段不等ピッチスプリング
「二段不等(ツーステッププログレッシブ)スプリング」は、狭いピッチと広いピッチの2種類持っているスプリングになります。

  • 2つのバネレート
  • 転換点が存在

このスプリングの特徴として、初期の軽い負荷の時は広いピッチのスプリングが縮み、高負荷の時には狭く反発力の強いピッチが主に動作することで、負荷(荷重)に対して2段階で調整できる点です。 一方で、弱いスプリングと強いスプリングの転換点があるので、ハンドリングの際に違和感を感じる恐れが出てきます。

多段不等ピッチスプリング
そして「コンスタントライジングレートスプリング」は複数のピッチ間隔でその間隔が徐々に狭まっていくスプリングになります。

  • 複数のバネレート
  • 転換点を感じにくい

このスプリングの特徴は、ツーステッププログレッシブスプリングのように段階的に負荷に対してスプリングが作用するだけでなく、複数のピッチで構成されているため、転換点を感じにくい設計になっています。

このように構造もフロントフォークの動作に影響を与えてくるので、交換する際の参考にして下さい。

4-2-2.スプリング調整(交換)のやり方

スプリングを交換するには、スプリングの購入とフロントフォークの分解・組み立てが必要になってきます。

分解と組み立ては、オーバーホールと同じ作業を行うので、もしスプリングの交換を考えている人は、オーバーホールと一緒に行うことをおすすめします。

→この交換は、DIYでするかバイクショップに持ち込んでしますが、もし少しで費用を安く抑えたいと思っている人は、「バイク|フロントフォークのオーバーホール費用を抑えるポイント4選」の記事で費用を抑えるポイントをご紹介しているので、参考にしてみて下さい。

5.フロントフォークの調整が必要な時

街乗りや普段のツーリングでバイクに乗っている方にはフロントフォークのサスペンション調整は必ずしも必要ではありません。ただし、下に挙げる状況に当てはまる場合は、サスペンションの調整を考えてみても良いでしょう。また、調整に不安があれば、バイクショップなどプロに相談しながら、進めましょう。

5-1.体重が標準に収まっていない人

バイクの初期出荷時の一般的な想定体重は、65kg~75kgを想定していると言われています。 もしこの範囲を大きく超える場合にはサスペンションの調整を考えた方が良いでしょう。

軽すぎる体重では、フロントフォークにかかる荷重が弱くなります。 その結果、一般的な想定よりも乗車時のフロント側の沈み込みが低下して、姿勢が反り返ったり、標準の人と比べてフロントフォークの動きが鈍く遅くなることもあるでしょう。

一方で、想定よりも体重がオーバーしているとフロントフォークが柔らかく感じたり、場合によっては底つきをしてしまいますので、プリロードやスプリング調整をして、底つきの解消を試みても良いでしょう。

5-2.路面からの衝撃が激しい場合

路面から衝撃を激しく感じた時もサスペンション調整を考えるタイミングです。

フロントフォークは伸び縮みをすることで、路面からの衝撃を吸収しています。 ただフロントフォークが硬すぎたり、プリロードのかけ過ぎで初期のストロークがなく、衝撃を激しく感じたときも調整を考えてみましょう。

5-3.底つきを感じた時

底つきを感じた時も調整を考えましょう。

底つきとはサスペンションが限界まで縮んだ状態のことです。 この底つきが起こると路面からの突き上げ感を生じます。 この場合は、プリロードを掛けたり、オイル面の上げるエアスプリング調整から始めると良いでしょう。

5-4.フロントフォークが柔らかすぎる時

フロントフォークの振動が激しく、柔らかさを感じる時にもサスペンション調整を考えるタイミングです。

フロントフォークの柔らかさ・硬さの調整は、減衰力調整かスプリング調整で行います。

この柔らかさもフロントフォークが沈み込む速さを調整するのか、ボトム付近の反力で調整するのかも、ライダーの感じ方で変わってきます。もし、ストロークの速さだけを変えたい場合は、費用的な問題から、減衰力調整をまず行うのが良いと思います。

6.まとめ

この記事では、フロントフォークのサスペンション調整の方法とそれぞれの効果ややり方について解説してきました。

もし、底つきを感じたりやフロントフォークの硬さを変更したい場合は、この記事を参考に是非サスペンションの調整に取り組んでみて下さい。

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